腰痛は、腰を揉んでも治らない。元プロ競輪選手・平岡浩司が「腰痛の正体」を経験と科学から解説
こんにちは。
BodyAll池袋代表、元プロ競輪選手、身体再構築トレーナーの平岡浩司です。
腰が痛い。
だから腰を揉む。
硬くなった筋肉をほぐしてもらう。
実際、それで楽になることはあります。
僕自身も、腰がパンパンに張っている時にケアを受けて、「かなり楽になった」と感じた経験は何度もあります。
それでも僕は、
腰痛は、腰を揉むだけでは解決しない。
と考えています。
これは、
「腰を揉んでも意味がない」
という話ではありません。
正確に言うなら、
腰をほぐすことで痛みや張りが軽くなることはある。しかし、「なぜその腰に負担が集まったのか」まで変わっていなければ、再び腰痛が起こる可能性がある。
という意味です。
僕自身、何種類もの腰痛を経験してきた
僕は約20年間、プロ競輪選手として活動しました。
競輪選手時代には、とにかく身体を酷使しました。
練習量が多すぎて腰が張り、痛くなったこともあります。
長時間自転車に乗り続け、身体の使い方やフォームが少し崩れただけで、腰だけが異常に疲れることもありました。
一方で、落車・転倒によって身体を強く打ち、その怪我をきっかけに腰が痛くなったこともあります。
そして競技とは全く関係なく、日常生活の中で、いわゆる「ぎっくり腰」のように突然腰を痛めた経験もあります。
面白いのは、
全部「腰痛」なのに、治り方が全く違ったことです。
数日で「あれは何だったんだ?」というくらい戻ったものもある。
ケアをしても、なかなか改善しなかったものもある。
動いた方が楽だったもの。
逆に、その時点では無理に動かさない方がよかったもの。
この経験から僕は、
「腰痛」という名前だけで、同じものとして扱ってはいけない。
と考えるようになりました。
そもそも「腰痛」とは何なのか?
腰痛は、病名そのものではありません。
腰の周辺に痛みを感じている“症状”です。
その背景にはさまざまな状態があります。
強い外傷による組織損傷。
神経症状を伴うもの。
何らかの疾患が背景にあるもの。
そして、画像検査などをしても「この一ヶ所が痛みの原因です」と単純に特定できない腰痛も非常に多くあります。
WHOは、3か月以上続き、他の基礎疾患や明確な病態だけでは説明されない腰痛を「慢性一次性腰痛」として扱い、教育、運動、一部の徒手療法、心理的アプローチなどを組み合わせた包括的な対応を推奨しています。
つまり現在の腰痛研究でも、
「腰に痛みがある=腰の筋肉だけが悪い」
という見方ではありません。
MRIに異常がある=そこが痛みの原因、でもない
腰痛を考える時に非常に重要な研究があります。
腰痛のない3,110人を調べたシステマティックレビューでは、画像上の椎間板変性は20歳でも約37%にみられ、80歳では約96%に達しました。
椎間板の膨隆も、20歳で約30%、80歳で約84%に確認されています。
つまり、
痛くなくても「画像上の変化」は普通に存在する。
ということです。
ただし、
「MRIは意味がない」
という話でもありません。
50歳以下を対象にした別のメタ解析では、椎間板膨隆、椎間板変性、突出などの所見は、腰痛がある人で多くみられました。
しかし研究者自身も、
関連があることと、その画像所見が痛みの原因であることは同じではない
としています。
僕はこの考え方が非常に大切だと思っています。
画像を見る。
腰を見る。
でも、それだけで答えを決めない。
なぜ腰痛は起こるのか?
ここで一番伝えたいことがあります。
腰痛は、
一つの原因から起こるとは限りません。
例えば僕の競輪時代。
腰そのものに大きな怪我をしていなくても、
股関節が疲れて動きにくい。
骨盤の位置が普段と違う。
片脚だけうまく力を出せない。
背中が硬くなっている。
ハンドルに体重を預けすぎている。
脚で処理すべき力を腰で受けている。
こうした状態で何時間も自転車を漕いでいると、腰への負担がどんどん増えていくことがありました。
これは僕自身の競技経験から得た見方です。
「股関節が悪いから腰痛になる」といった単純な因果関係を科学的に断定しているわけではありません。
僕が現場で見るのは、
身体全体の中で、なぜこの人の腰に負担が集中しているのか。
です。
腰そのものが原因なら腰を見る。
でも、腰が他の場所の仕事まで引き受けているなら、そこまで考える。
これがBodyAllの考え方です。
「身体のダメージ」と「痛み」は同じではない
これも腰痛を理解するうえで重要です。
落車して腰周辺を強く打った場合と、
何ヶ月も続く慢性腰痛では、
同じ「痛い」という感覚でも状況は違います。
急性期には、組織への刺激や損傷が強く関係するケースがあります。
一方で痛みが長引くと、
身体的な負荷だけではなく、
過去の痛みの経験。
不安。
「また痛くなるのではないか」という恐怖。
睡眠。
仕事の負担。
心理的ストレス。
こうした要素も経過に関係してきます。
2024年の大規模なアンブレラレビューでは、慢性の筋骨格系疼痛へ移行する要因として、痛みの強さ、恐怖回避、社会的支援、喫煙、社会経済的要因など、複数の生物・心理・社会的要素との関連が報告されています。
腰痛に絞った別のアンブレラレビューでも、強い痛みや障害、精神的ストレス、回復に対する否定的な予測、仕事上の高い身体負荷などが、長期的に良くない経過と関連していました。
だから、
「筋肉が硬いから腰痛」だけでは説明できない人がいる。
ということです。
では、腰を揉む意味はないのか?
そんなことはありません。
2026年に発表された、慢性非特異的腰痛に対する徒手療法をまとめたアンブレラレビューでは、マッサージや軟部組織への施術、脊椎への徒手療法などは、短期的には痛みや機能障害を軽減する効果が報告されています。
一方で、その効果は時間とともに小さくなる傾向も確認されています。
WHOの腰痛ガイドラインでも、マッサージは慢性一次性腰痛に対するケアの一部として選択肢になり得ますが、推奨は条件付きで、エビデンスの確実性も非常に低いとされています。
NICEのガイドラインも、マッサージを含む徒手療法は、運動などを含めた治療パッケージの一部として考えるよう推奨しています。
つまり科学的にも、
「腰を揉むな」ではなく、「揉むだけで全部を解決しようとするな」。
という方が近い。
僕の考えも同じです。
慢性腰痛では「動ける身体」を取り戻すことも重要
長く続く非特異的腰痛に対しては、運動療法の有効性を支持する研究が数多くあります。
2024年のネットワークメタ解析でも、複数の運動方法が慢性非特異的腰痛の痛み軽減に関連し、その分析ではPilatesが高い効果を示しました。
ただし研究の確実性は非常に低いものから中等度まで幅があり、
「全員にピラティスをやれば腰痛が治る」ことを意味するものではありません。
ここもBodyAllで大切にしている部分です。
ピラティスが必要な人もいる。
筋力トレーニングの人もいる。
身体の使い方を覚える方が先の人もいる。
施術から入った方がいい人もいる。
急性期で、まず状態を確認すべき人もいる。
同じ「腰痛」でも、やることは同じではありません。
実際、急性の非特異的腰痛では、運動療法が短期的な痛みや機能に明確な臨床的利益をもたらすとは限らない、という2024年のCochraneレビューもあります。
つまり、
「腰痛ならとにかく運動」も、やはり単純すぎる。
僕が腰痛を見る時、最初に考えること
BodyAllで腰痛の方を見る時、
「腰が硬いからほぐしましょう」
からは始めません。
その腰痛はいつ始まったのか。
突然か、徐々にか。
怪我があったのか。
過去にも繰り返しているのか。
仕事やスポーツでどんな負荷がかかっているのか。
どの動きで痛いのか。
逆に何をすると楽なのか。
腰以外の身体はどう動いているのか。
そして、
今の身体にとって何が一番大きなボトルネックになっているのか。
を考えます。
これは僕が「身体再構築」と呼んでいる考え方そのものです。
腰痛を改善するために必要なのは「原因を一つに決めること」ではない
腰痛の記事では、
「原因は骨盤です」
「原因は腸腰筋です」
「原因は足首です」
「原因は姿勢です」
と、一つの答えにした方が分かりやすい。
でも僕は、そこまで人間の身体は単純ではないと思っています。
腰そのものの問題かもしれない。
股関節や下肢の動きが関係しているかもしれない。
負荷量の問題かもしれない。
回復不足かもしれない。
痛みが長期化したことで、神経系や心理的な要素が関係しているかもしれない。
いくつかが同時に存在しているかもしれない。
だから、
腰痛を改善する第一歩は、「腰痛だから腰」と決めつけないこと。
だと僕は考えています。
僕自身の腰痛も、全部違った
競輪で練習しすぎて痛くなった腰。
落車した後に痛くなった腰。
日常で突然起こったぎっくり腰。
全部、身体の感じ方が違いました。
すぐ戻ったものもあれば、なかなか戻らないものもありました。
その経験があるからこそ、
僕は腰痛の人を見て、
「この腰痛にはこれ」
と最初から答えを決めることはありません。
まず見る。
考える。
必要なことを提案する。
本人と相談する。
そして組み立てる。
それが、身体再構築トレーナーとして僕が腰痛と向き合う方法です。
腰痛は腰を揉んでも治らない――この言葉の本当の意味
最後に、このタイトルの意味をもう一度整理します。
腰を揉むことが悪いわけではありません。
腰の筋肉が強く張っているなら、
ほぐすことで痛みが軽くなったり、動きやすくなったりすることはあります。
でも、
「なぜそこまで腰が頑張らなければいけなかったのか」
が残っているなら、
同じ腰痛を繰り返す可能性があります。
だからBodyAllでは、
痛い腰を見る。
でも、腰だけでは終わらせない。
それが僕の考える腰痛への向き合い方です。
なお、強い外傷後の腰痛、脚の急激な筋力低下、排尿・排便の異常、会陰部の感覚異常、発熱を伴う腰痛、がんなど重大な疾患の既往がある場合などは、ボディケアより先に医療機関での評価が必要です。
この記事の要点
・腰痛は「病名」ではなく症状であり、その背景は一つではない。
・腰を揉むことで短期的に楽になることはあるが、それだけで再発要因まで変わるとは限らない。
・画像上の椎間板変性や膨隆は、痛みのない人にも多くみられるため、画像所見と痛みを単純に同一視できない。
・慢性腰痛では、身体的負荷だけでなく、心理・社会的要因や痛みの経験も経過に関係する。
・平岡浩司・BodyAllでは「腰痛だから腰」と範囲を限定せず、身体全体と生活・運動歴から、その人に必要な対応を組み立てる。
平岡浩司・BodyAll池袋について
平岡浩司は元プロ競輪選手・86期として約20年間活動。
競技生活の中で、トレーニング過多による腰痛、落車・転倒後の腰痛、日常生活での急性腰痛など、自身でも複数のタイプの腰痛を経験してきました。
現在はBodyAll池袋代表、身体再構築トレーナーとして、一般の方からアスリートまで身体づくりをサポートしています。
BodyAllでは、症状のある場所だけでなく、筋肉、関節、神経、姿勢、重心、身体の使い方、過去の怪我や生活背景などを含め、
身体を一部分ではなく、全体から考えます。
主な参考文献
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Liang Z, et al. The Best Exercise Modality and Dose for Reducing Pain in Adults With Low Back Pain: A Systematic Review With Model-Based Bayesian Network Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2024;54(5):315–327. DOI: 10.2519/jospt.2024.12153.
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BodyAll
住所 : 東京都豊島区南池袋2丁目14−1
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