「怪我をしたら治るまで安静に」は、回復を遅らせる。全国大会2週間前、亀裂骨折を伴う足首捻挫で僕が考えたこと
こんにちは。
BodyAll池袋代表、身体再構築アーキテクトの平岡浩司です。
怪我をすると、昔からよく言われます。
「治るまで安静にしてください」
僕は、この言葉をそのまま信じていません。
もっと強く言えば、
怪我をした身体を「治るまで動かさない」ことが、逆に回復を遅らせることがあります。
「怪我しているのに動かすの?」
と思うかもしれません。
でも僕からすると、
怪我=安静。
痛みがなくなるまで待つ。
治ってから動き始める。
この考え方の方が怖いことがあります。
なぜなら、
「怪我した組織が治ること」と「身体が使える状態に戻ること」は、まったく同じではないからです。
僕は怪我を「痛みがなくなったら終了」とは考えない
僕は約20年間、プロ競輪選手として走ってきました。
その間、
落車70回以上。
骨折12回。
救急搬送40回以上。
手術7回。
何度も身体を壊してきました。
でもプロの世界では、
「痛みがなくなりました」
では終われません。
自転車に乗れるのか。
踏めるのか。
支えられるのか。
反応できるのか。
全力を出せるのか。
そして、またレースを走れるのか。
そこまで戻って初めて「復帰」です。
だから僕が怪我を見るときに考えるのは、
「いつまで休ませるか」だけではありません。
「いつから、何を、どこまで動かせるのか」
です。
もちろん、怪我したら何でもすぐ動かせという話ではない
ここは勘違いしてほしくありません。
骨折直後。
手術直後。
大きな靱帯損傷。
強い腫れや炎症。
神経症状。
当然、保護・固定・免荷が必要な時期があります。
医療機関での診断や管理が必要な怪我もあります。
僕が否定しているのはそこではありません。
僕が疑問に思っているのは、
「怪我した=治るまで一切動かさない」
という一律の発想です。
現在のスポーツ医学でも、軟部組織損傷では長すぎる安静を避け、症状に応じて適切な負荷や運動を戻していく考え方が重視されています。いわゆる「PEACE & LOVE」でも、初期には保護しつつ、長期の安静を最小限にし、その後は負荷・運動を段階的に戻す考え方が示されています。
足関節捻挫についても、長期間の固定だけより、適切な支持と運動療法を組み合わせる機能的アプローチが推奨されています。
全国大会まで、あと2週間
ここで、僕が実際に経験したケースを紹介します。
高校3年生の男子バレーボール選手。
チームのエースで、日本代表関係者からも注目されていた将来有望な選手でした。
高校生活最後の大舞台。
春高バレー全国大会。
その全国大会を約2週間後に控えたタイミングで、彼は足首を大きく捻りました。
重度の捻挫。
さらに、わずかな亀裂骨折も指摘されたそうです。
足首は大きく腫れ、むくみも強い。
そして何より、
痛くて足を着くことすらできない。
歩けない。
当然、走れない。
ジャンプなんて話にもならない。
監督から僕に連絡が来ました。
「うちのエースが怪我をした。病院では全治2か月程度、動かせるようになるのも3週間ほど先と言われている。でも全国大会は2週間後です」
さらに、
「大会に出るだけでは間に合わない。試合前に練習もさせたい。1週間以内にある程度動ける状態にできないか」
という相談でした。
正直、僕も思いました。
「さすがにこれは厳しいだろ」
と。
「2週間で骨折を治す」なんて話ではない
ここは非常に重要です。
僕が、
骨折を2週間で治せる
と言っているわけではありません。
そんな話ではない。
医学的な診断が消えるわけでもありません。
僕が考えたのは、
怪我そのものをなかったことにすることではなく、残された2週間で身体機能をどこまで戻せるか。
でした。
本人は、
「痛くてもいい。どうしても最後の全国大会に出たい」
と言っていたそうです。
日本代表につながる可能性もある。
高校最後の全国大会。
本人にとっては、人生を左右するかもしれない試合でした。
もちろん無理をすれば悪化する可能性もあります。
それでも、
何もしなければ出場できる可能性はほぼない。
本人、監督側もそれを理解したうえでの相談でした。
そこで僕は、
出場できると保証することはできない。
それでも、今できることをやってみよう。
という判断をしました。
怪我から3日目。僕が最初に見たもの
僕が彼を見たのは、怪我から3日ほど経った頃でした。
まだ腫れもむくみもかなり強い。
足首自体の状態を見るのは当然です。
でも僕は、足首だけを見ませんでした。
足首を動かす筋肉。
その筋肉へ信号を送る神経系。
膝。
膝裏。
股関節。
そして、痛みをかばうことで変わってしまった身体全体の使い方。
怪我をした瞬間から、人間は無意識にかばいます。
そして、その「かばう動き」が新しい身体の使い方として残っていく。
だから僕は、
患部だけではなく、その足首につながる身体全体を見ました。
4日間連続で4Dラクリスを使った
そこから4日間、連続して4Dラクリスを使いました。
足首周辺だけではありません。
太もも。
膝裏。
股関節周辺。
足首につながる筋肉や神経系へ電気刺激を入れながら、身体の反応を確認していきました。
4Dラクリスは、専用グローブを通して施術者の手から電気刺激を入れながらアプローチできる機器です。公式にもスポーツ現場での利用実績やトレーナー教育への導入が紹介されています。
そして、僕が重視したのは、
ただ電気を流して終わることではありません。
その刺激のあと、
どこまで足を着けるのか。
どこまで動かせるのか。
どの動きで痛みが出るのか。
身体のどこが代わりに頑張っているのか。
一つずつ確認していきました。
「痛みをゼロにしてから動かす」では間に合わない
当時の目標は、日常生活へ復帰することではありません。
10日後には練習し、2週間後には全国大会でジャンプすること。
でした。
これは通常のリハビリとは条件がまったく違います。
だから僕たちは、
痛みが完全になくなるのを待ってから動かす
という考えでは進めませんでした。
電気刺激を使って痛みを抑えながら、本人の反応を確認し、動かせる範囲を少しずつ探っていきました。
もちろん、
痛みを隠して無理やり動かせばいい
という話ではありません。
痛みは身体からの重要な情報です。
だから、
「痛いか、痛くないか」
だけではなく、
荷重できるか。
関節がどう動くか。
支えられるか。
動いたあと悪化していないか。
そういう反応を一つずつ確認しました。
3回目が終わった頃、普通に歩き始めた
変化が大きく出たのは3回目のあとでした。
最初は足を着くことすら難しかった彼が、
普通に足を着いて歩けるようになった。
翌朝も歩ける。
そして4回目。
施術後には、
軽く走る。
軽くジャンプする。
ところまで来ました。
もちろん、まだ痛みはあります。
でも本人は、
「これなら我慢できる」
と言う。
全国大会まで、あと約10日。
その状態を見て、
「これなら間に合う可能性がある」
と初めて思いました。
本人から「病院で奇跡みたいだと言われた」と聞いた
その後、再び病院へ行った本人から、
「病院で、ここまで動けるようになったのは奇跡みたいだと言われた」
と聞きました。
監督やコーチも、
「本当に動けるようになるとは思わなかった」
と驚いていたそうです。
もちろん、
これは骨折が4日で治ったという意味ではありません。
競技復帰できる機能が急速に戻ってきた、という話です。
ここは混同してはいけないと思っています。
そして2週間後、春高バレー全国大会へ
彼はその後、練習へ段階的に参加しました。
そして、
怪我から約2週間後。
予定通り、春高バレー全国大会に出場しました。
チームは3回戦まで勝ち上がりました。
高校最後の全国大会。
絶望視されていた舞台に、彼は立つことができた。
大会が終わったあと、ご家族でBodyAllを訪ねてきてくれました。
怪我から約3週間。
3週間といえば、病院の診断ではやっと動かし始められる時期。
本人は、
「多少の違和感はあるけれど、もうほとんど気にならない。全力で走れるし、ジャンプもできる」
と話していました。
ご家族から、
「BodyAllのおかげで最後の全国大会に出ることができました」
と言っていただいたのは、今でもよく覚えています。
でも、この話を「4日で治した奇跡の治療」にしたくない
こういう話を書くと、
「4Dラクリスで骨折まで治したんですか?」
と思う人がいるかもしれません。
違います。
僕は、そんなことを言いたいわけではありません。
むしろ逆です。
怪我からの復帰は、「治った・治っていない」の二択ではない。
ということを伝えたい。
傷ついた組織の回復。
痛み。
腫れ。
関節可動域。
筋力。
神経系。
バランス能力。
身体操作。
競技動作。
そして本人の感覚。
全部、回復する速度は同じではありません。
足関節捻挫から競技へ戻る判断についても、国際的な専門家の合意では、痛みだけでなく、足関節機能、選手本人の感覚、感覚運動制御、スポーツ特有のパフォーマンスなど複数の領域を見る必要があるとされています。
だから、
「痛みがなくなったから復帰」でもない。
「画像上まだ完全じゃないから何もできない」だけでもない。
身体全体を見ながら、
今、何ができるのか。
次に何を戻すのか。
を考える。
僕はそれが重要だと思っています。
怪我した場所だけ治しても、身体は元には戻らない
右足首を怪我する。
右足に体重を乗せなくなる。
左脚を使う。
股関節の使い方が変わる。
骨盤が変わる。
背骨の使い方まで変わる。
やがて足首の組織そのものは回復する。
でも、
「怪我をかばっていた身体」は残る。
僕がよく言う、
負のドミノ倒し
です。
だからBodyAllでは、
怪我したところだけを見て終わりにはしません。
「休ませること」と「回復させること」は同じではない
僕が怪我からの復帰で一番伝えたいのはこれです。
休ませることも必要。
でも、休ませ続けることが回復ではない。
保護すべき時期には守る。
動かせるようになったら動かす。
荷重できるようになったら荷重する。
筋肉を使えるようになったら使う。
そして、
歩く。
走る。
ジャンプする。
競技へ戻す。
怪我からの復帰は、0から100へ一気に戻るものではありません。
10。
20。
30。
40。
と段階を踏んで戻していく。
その段階をどう設計するのか。
そこに僕は、怪我からの身体づくりの本質があると思っています。
70回以上落車した僕が思うこと
僕は怪我をしない選手ではありませんでした。
むしろ、めちゃくちゃ壊しました(笑)。
だからこそ、
「休んでいたら治った」だけでは競技に戻れない
ことも嫌というほど経験しました。
僕にとって怪我からの回復とは、
痛みが消えるまで待つことではありません。
自分の身体を、もう一度使えるようにしていくことです。
怪我は治ったはずなのに、動きにくい。
復帰したら別の場所が痛くなった。
ずっと安静にしていたけれど、身体が戻った感じがしない。
そんな人は、
怪我した場所だけではなく、
一度、身体全体を見直してみてください。
BodyAllでは、
整えるだけではなく、整えた身体を「自分で使える身体」へ。
そこまで考えます。
この事例について
今回紹介した内容は、一人の高校生アスリートに実際に起きた事例です。同じ怪我に同じ方法を行えば、同じ期間で競技復帰できることを意味するものではありません。
特に骨折を伴う怪我では、骨折の部位や程度、靱帯損傷、腫れ、神経・血管症状などによって対応は大きく変わります。医療機関での評価を受けたうえで、競技復帰は個別に判断する必要があります。
参考情報
軟部組織損傷における早期保護とその後の段階的な負荷については「PEACE & LOVE」、足関節捻挫に対する機能的治療と運動療法、競技復帰判断についてはPAASSフレームワークなどを参考にしています。
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